先日、仕事の移動中に地下鉄に乗っていたときのこと。車内で「地下鉄の父・早川徳次」と書かれたポスターをみつけました。

それを見た私、心の中で「え? 早川徳次って地下鉄もなんかやってたの!?」と、めちゃくちゃ驚いてしまったんです。

というのも、わたくし昔仕事でシャープさんの機器を扱っていたこともあり、創業者の早川徳次さんの功績についてはよく知っておりました。たとえばみなさんお馴染みの「シャープペンシル(早川式繰り出し鉛筆)」を発明し、それが社名の由来となった金属加工から身を興した起業家です。

このシャープペンシル。仕組み自体は海外に先例があったものの、実用的な文房具として大ヒットさせ、「シャープペンシル」の名を広く知らしめたのが早川徳次さんでした。その後、関東大震災で全てを失うという壮絶な苦難を乗り越えて大阪へ移り、国産ラジオの製造を手掛け、その後テレビや電卓などの分野へ事業を広げました。さらに、後の電子機器時代を先取りする「世界初のオールトランジスタ式電卓」まで生み出しました。以前のブログでもご紹介した、伝説のパソコン「X68000」もシャープですし、亀山モデルと銘打っていち早くテレビの液晶化を進めたのもシャープさんでした。

(※早川徳次氏の波乱万丈な生涯や再起の歩みについては、シャープ株式会社様の「創業者 早川徳次」公式ページに詳しく記録されています)

と、ここまでは存じあげていたのですが、地下鉄?? 文房具からラジオ、電卓、パソコンまで作ったシャープの早川さんが、まさか日本の地下鉄まで1人で引っ張ってきたの!?……と思ったら。

なんと、地下鉄の父と言われる早川徳次さんは、漢字まで完全に一致した「同姓同名の別人」なんだそうで! はじめて知りましたー。

地下鉄の父、早川徳治(のりつぐ)

こちらの地下鉄の早川氏の生涯も、調べてみるとシャープの早川氏に負けず劣らずものすごいものでした。

山梨県出身で、早稲田大学卒業後に南満洲鉄道(満鉄)や鉄道院を経て、郷里の先輩である「鉄道王」根津嘉一郎氏に見出され、赤字鉄道の経営再建で次々と腕を振るった辣腕ビジネスマン。 大正3年(1914年)に視察先のロンドンで地下鉄を目の当たりにし、「これからは東京にも地下鉄が必要だ!」と確信されます。

当時は「東京の軟弱な地盤の地下に掘るなど技術的・資金的に無理だ」「狂気の沙汰だ」と周囲からはなかなか理解を得られなかったそうです。しかし、彼は東京市の地層図を調べて固い地層があることを確認し、自ら豆を使った交通量調査を行うなど、地道かつ圧倒的な熱意で投資家を説得。関東大震災の困難や数々の難工事を乗り越え、昭和2年(1927年)12月30日、ついに日本初(東洋初)の地下鉄(浅草〜上野間、現在の銀座線)を開通させたのです。

(※地下鉄の父の地道な奮闘については、東京メトロ様のメトロアーカイブ「『地下鉄の父』早川徳次の功績」に当時の写真とともに詳しく載っています)

ちなみに、プロフィールを整理するとこんな感じです。

  • ⚡️ シャープの創業者:早川徳次(はやかわ とくじ)氏 (1893年〜1980年 / 東京都出身)
  • 🚇 地下鉄の父:早川徳次(はやかわ のりつぐ)氏 (1881年〜1942年 / 山梨県出身)

同じ時代に、同じ漢字の名前を持つ2人の傑出した人物が、日本の近代化をまったく別の角度から引っ張っていたなんて、歴史のロマンを感じます。

……と、これだけでも十分に「へぇー!」という話なのですが、話はここで終わりません。

映画『国宝』にも現れた「早川徳次」

吉田修一さんの小説を原作とする話題の映画『国宝』にも、なんと「早川徳次(とくじ)」という人物が登場するではないですか。 主人公の歌舞伎役者・喜久雄の幼馴染の役です。

作中では、極道の世界に身を置いた徳次が、大成していく喜久雄を陰から支え、楽屋花や暖簾を贈り続けるという、幼馴染の絆がドラマチックに描かれているのです。

※映画の詳細は、こちらの映画『国宝』公式サイトをご覧ください。

ちょっとだけ行政書士の話

さて、そんなフィクションのハラハラ感はおいておいて、ここからはちょっとだけ行政書士らしいお話を。

今回のように、「漢字は同じだけど読み方が違う」とか、「漢字も読み方も完全に一致する同姓同名」というケース。実は、私たち行政書士の実務(相続手続きでの戸籍調査や、各種手続きなど)では、決して珍しくない「あるある」だったりします。

もし、お名前の漢字だけで「よし、この人で間違いない!」と手続きを進めて、電卓を叩いて相続分の計算などを進めてしまったら、現実の世界では重大なトラブルになってしまいます。

今回の早川徳次氏の例のように、名前が同じだからといって同一人物とは限りません。相続手続きでは、戸籍をたどって相続人を確定する作業が欠かせません。

名前だけを見ると同じ人物のように思えても、実際には別人だったということもあります。そのため、戸籍や住民票などの資料を丁寧に確認しながら進めていくことが大切なのです。「生年月日」や「本籍地」などをきちんと確認してはじめて、「この人で間違いない」と判断できるわけです。

日頃、お役所の手続きなどで「厳格な本人確認」や「生年月日の確認」を求められて「ちょっと面倒だな…」と思われることもあるかもしれませんが、あれはこうした同姓同名による誤認トラブルを防ぎ、みなさんの大切な権利を守るための大事なステップなんですね。

日常のふとしたポスターから始まった気づきですが、シャープペンシルからラジオ、電卓、X68000、そして地下鉄や映画まで、バラバラだった知識の点と点が繋がり、面白い発見となりました。

名前は同じでも、人はそれぞれ別の人生を歩んでいます。だからこそ、行政手続きでは「誰なのか」を正確に確認することがとても大切なのだと、あらためて感じた出来事でした。

みなさんが思い浮かべる「早川徳次」は、一体どの早川さんでしたか?

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