行政書士試験の勉強において、法学の基礎として必ず学ぶのが「一般法と特別法」の関係性です。

「特別法は一般法に優先する(特別法優位の原則)」というルールは、テキストの最初の方に登場しますが、具体的なイメージが湧きにくいと感じる方もいるかもしれません。

今回は、試験に出題されやすい法令の具体例を挙げながら、「一般法・特別法」の関係と、それに類似して受験生を悩ませやすい「法律の競合(重ね掛け)」の考え方について整理します。

「一般法と特別法」の明確な具体例

法学上の「特別法」とは、ある法律(一般法)をベースにしながら、特定の対象や状況に限ってルールを上書き・限定する関係にあるものを指します。これらは、以下のように同じジャンル(法分野)の中で、適用範囲を狭めて上書きするものが該当します。

  • 民法(一般法)と商法(特別法)

民法はすべての人や取引に広く適用される基本的なルールですが、商法は商人や商行為に関する特別なルールを定めた法律であり、民法の特別法として位置付けられます。

  • 民法(一般法)と借地借家法(特別法)

民法は契約一般に関するルールを定めていますが、借地や借家については借地借家法という特別法があり、借主を保護するための特別な規定が設けられています。

このように、一般法と特別法の関係にある場合には、同じ事項について両方の法律が関係するときは特別法が優先され、その範囲では一般法よりも特別法のルールが適用されます。

ドローン規制は特別法ではなく「重ね掛け」になる

一方で、実務でもよく話題に上るドローン(小型無人機)の飛行規制(「航空法」と「小型無人機等飛行禁止法」)は、どちらかが特別法というわけではありません。

この2法は、片方がもう片方から派生したものではなく、「全く異なる目的(保護法益)と視点から作られた、異なる目的を持つ独立した法律」という関係になります。

2つの法律の違いを簡単な表にまとめると、以下のようになります。

項目航空法小型無人機等飛行禁止法
目的航空の安全確保重要施設の警備
管轄国土交通省警察庁
  • 航空法は、ドローンが航空機と衝突したり、落下して地上の人や物に当たったりしないよう、「空全体の安全・事故防止」を目的としています。
  • 小型無人機等飛行禁止法は、国会議事堂や総理大臣官邸、原子力発電所などの重要施設を狙ったテロや危険を防ぐため、「特定の施設周辺における警備」を目的としています。

上記の通り、この2つの法律は、法律が守ろうとしている目的(保護法益)も、管轄する行政機関も異なります。そのため、一方が他方の特別法として優先される関係ではなく、それぞれが独立して適用される「重ね掛け(同時適用)」の関係になります。

したがって、対象施設周辺でドローンを飛行させる際は、国交省への「航空法上の飛行許可・承認」と、警察署等への「小型無人機等飛行禁止法上の事前通報」の両方が必要になる場合があります。

100g未満のものを含む模型航空機は、航空法上の「無人航空機」には該当しないため、機体認証や無人航空機操縦者技能証明(いわゆるドローン免許)の対象とはなりません。

しかし、だからといってどこでも自由に飛行できるわけではありません。模型航空機についても、空港周辺や一定高度以上の飛行については、航空法第134条の3に基づき国土交通大臣の許可等が必要となる場合があります。

さらに、航空法以外にも、小型無人機等飛行禁止法、電波法、道路交通法、地方公共団体の条例など、複数の法令による規制を受ける可能性があります。

試験対策への応用:「二重の規制」の視点

行政法や民法の判例を学ぶ際や、記述式問題を読み解く際にも、この「別々の行政機関が、異なる目的で、それぞれ個別に規制の網を張っている(二重の規制)」という構造は非常によく登場します。

試験勉強の中で、「Aという法律の要件を満たしたからといって、当然にBという法律の規制を免れるわけではない」という論点に遭遇した際は、この違いを意識してみてください。「ある法律の許可を受けているからといって、別の法律の規制まで受けなくてよいとは限らない」という感覚を持っておくと理解しやすいでしょう。

複数の法令が関係する場合に、「上書きの関係(特別法)」にあるのか、それとも「並存(重ね掛け)」の関係にあるのかを見極める視点は、法的な思考力を鍛える上で大きな助けとなるはずです。

行政書士試験では、「特別法だから一般法に優先するのか」「それとも目的の異なる法律が並存して適用されるのか」を問うような思考が重要になります。単なる暗記ではなく、法律同士の関係性を意識しながら学習すると、理解が深まり記述式や判例問題にも対応しやすくなると思います。

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