新しいオフィスができると、それまで使っていた場所の「ちょっとした古さ」が妙に気になり始めるものです。今回、私の目に留まったのは壁のスイッチやコンセント。

普段は何気なく使っていますが、ここが黄ばんでいたり古びていたりすると、空間全体の印象がどうしても野暮ったくなってしまいます。「よし、ここを新しくしよう!」と思い立ったわけですが……。
実は、壁の中の配線に触れるスイッチの交換には資格が必要です。 私は現在、行政書士登録を申請中の身ですが、実は「電気工事士」の免状も持っております。これがあれば、自分のオフィスのスイッチも交換できてしまうのです。
■ 「電気工事士」は行政法でいうと何?
行政書士試験の勉強をしていると、「許可」「認可」「特許」……といった言葉が出てきます。日常用語では似たような意味で使われますが、法律の世界では厳密に区別されています。
では、「電気工事士」という資格はどれに当たるでしょう? これ、行政法上の分類では「許可」にあたります。
一般的に資格とは、「その行為を誰にでも許すと(感電や火災の)危険があるので一律に禁止し、一定の能力があることが証明された人にだけ、その禁止を解除して活動を認める」という性質を持ちます。この「本来禁止されていることを解除してもらう」性質のものを、行政法学では「許可」と呼びます。
許可、認可、特許……なかなか覚えづらいですよね。私は当時、以下のような呪文形式で暗記していました。
「カッキン、きょめん、とくにんだい。かっこうつうじゅ。」
(下命・禁止・許可・免除 / 特許・認可・代理 / 確認・公証・通知・受理)
さらにこれを口ずさみながら、「法律行為的行政行為」なのか「準法律行為的行政行為」なのか(行政庁の意思があるのかないのか)を樹形図にして書くことを、勉強に飽きたら何度も繰り返しました。単に名前を覚えるだけでなく、この分類をわけて考えられないと、試験では役に立たないからです。
■ 電気工事を「事業」にするには
さらに、個人が工事をするだけでなく、これを「商売(事業)」として行う場合には、さらに複雑な許認可が絡んできます。
- 建設業許可(電気工事業) 1件の請負代金が税込み500万円以上の電気工事を行う場合に必須となります。営業所ごとに「専任技術者」を置くなど、厳しい要件があります。
- 電気工事業の登録 500万円未満の軽微な工事であっても、代金をもらって仕事をするなら「登録電気工事業者」としての手続きが必要です。
ちなみに、建設業許可は『国交省』の管轄ですが、電気工事業の登録は『経産省(資源エネルギー庁)』の管轄。同じ「電気工事」を扱うにしても、管轄が異なるわけですね。
今回はあくまで「自分の事務所のスイッチ交換」。私の免状があれば問題なしということで、さっそく新しいパーツを買いにホームセンターへと向かいました。
■ 現場作業と「ハサミ金具」の罠
ホームセンターのスイッチ売り場。そこには、よく見かけるパナソニックの「コスモシリーズワイド21」の隣に、ふと目を引く一角がありました。それが最新の「アドバンスシリーズ」。
フラットでマットな質感、デザインも洗練されていて実にかっこいい。「価格もそんなに変わらないし、せっかくだからこれにしよう!」と、パーツを一通り(取付枠、プレート、スイッチパネル、ホタルスイッチ)揃えて意気揚々と引き揚げました。
事務所に戻り、さっそく作業に取り掛かります。パネルを外し、中の電線を抜く。作業自体は難しいものではありませんが、たとえ自宅であっても無資格で行うのは法令違反ですので、絶対に真似しないでくださいね。

古いスイッチを外すと、壁の裏で固定していた「ハサミ金具」が現れます。その昔、うっかりこの金具を壁の裏に落としてしまい、慌てた苦い記憶が蘇ります。慎重に作業を進め、いよいよ新しい金具を取り付けようとしたその時でした。
「……あれ? 入らない」
古いスイッチから外したハサミ金具が、新しいアドバンスシリーズの取り付け金具に、微妙にはまらないのです。
しかし、この時の私はまだ、この後「現場の罠」にハマり、三度もホームセンターへ走ることになるとは夢にも思っていませんでした……。
(後編へ続く)

