※本記事は【前編】の続きです。前編をまだご覧になっていない方は、ぜひ合わせてお読みください。
👉 【前編】【行政書士が解説】共同親権はかえって揉める?離婚後の親権と「子どもの利益」を考える
共同親権であっても単独親権であっても、離婚後の生活について父母の間で認識が食い違えば、後々トラブルになる可能性があります。
だからこそ、離婚前に「そのうち話し合えばいい」とせず、できるだけ具体的に整理し、書面に残しておくことが重要です。今回は、離婚前に決めておきたい具体的な項目と、離婚協議書・公正証書の活用法について解説します。

離婚後のトラブルを防ぐために、離婚前に決めておきたいこと
① 子どもの生活・監護について
まずは、子どもが離婚後にどちらの親と生活するのか、日常的な監護をどのように行うのかを整理しておきましょう。
共同親権の場合でも、実際の生活ではどちらか一方の親と子どもが同居するケースがあります。その場合、以下の項目について具体的に考えておくと、後々の認識の食い違いを減らしやすくなります。
- 生活拠点・通学
- 日常の送迎・学校との連絡
- 日常的な医療
- 習い事の決定や費用
② 重要な事項について、どのように協議するのか
共同親権では、重要な事項について父母双方で親権を行使することが基本となります。そこで、「何かあったら話し合う」だけではなく、
- どのような方法で連絡するのか(メール、専用アプリなど)
- どの程度の期間で返事をするのか
- どのような資料を共有するのか
- 意見が分かれた場合には、どのように協議するのか
など、父母間の連絡・協議の方法についてあらかじめ整理しておくことも考えられます。
もちろん、法律上の親権行使について家庭裁判所の判断が必要となる場面まで、離婚協議書だけですべて解決できるわけではありません。それでも、あらかじめ父母間のルールを具体化しておくことには大きな意味があります。
③ 親子交流(面会交流)について
離婚後、子どもと離れて暮らす親が子どもとどのように交流するのかについても、できるだけ具体的にしておきましょう。
- どのくらいの頻度で会うのか
- 受け渡しをどこで行うのか
- 宿泊を伴う交流をするのか
- 電話やオンラインでの交流をどうするのか
- 子どもの学校行事への参加をどうするのか
「月に1回程度」といった抽象的な表現だけでなく、実際の生活をイメージしながら決めておくことが、後のトラブル防止につながります。
④ 養育費について
養育費についても、金額だけでなく以下の内容をできるだけ具体的にしておきます。
- 毎月いくら支払うのか
- いつまで支払うのか(支払期間)
- 何日に支払うのか
- どの口座に振り込むのか
- 大学進学など特別な費用が発生した場合はどうするのか
特に「いつまで支払うのか」という期間の設定は重要です。
成人年齢は18歳となっていますが、養育費の終期については当事者間で認識が異なることがあります。「18歳の到達まで」「20歳の誕生月まで」「大学卒業後の3月まで」など、具体的な取り決めをする場合には、留年や進学の有無なども含め、お互いの認識を一致させておくことが大切です。
養育費については、口約束だけで終わらせず、書面に残しておくことをおすすめします。
「話し合った内容」を、きちんと書面に残す
ここまで読んでいただいて、「結局、離婚する前にかなり細かいところまで決めておいたほうがいいんだな」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
そのとおりです。
離婚するときは、「今はお互い納得しているから大丈夫」と思っていても、離婚後に生活環境が変われば、認識が変わったり、記憶が食い違ったりすることがあります。
だからこそ、当事者間で合意できた内容は、できるだけ具体的に書面に残しておくことが大切です。そのために作成するのが「離婚協議書」です。
離婚協議書には、以下のような項目について、当事者間で合意した内容を記載することができます。
- 親権・監護に関する取り決め
- 養育費
- 親子交流(面会交流)
- 子どもの生活・監護
- 財産分与・慰謝料
- 年金分割
- その他、離婚に伴って合意した事項
大切なのは、後から読んだときに「これはどういう意味だったのか」とならないよう、できるだけ具体的にしておくことです。

さらに確実に残したいなら「公正証書」という方法もあります
特に養育費など、将来的に金銭の支払いが発生する事項については、公正証書を作成する方法があります。
公正証書に一定の条件を満たす「強制執行認諾文言」を入れておけば、万が一支払いが滞った場合に、裁判を経ずに強制執行を申し立てることができます。
ただし、公正証書にすれば、記載したすべての事項について強制執行ができるというわけではありません。特に強制執行との関係では、どのような内容をどのような形で公正証書にするのかを確認しておくことが大切です。
行政書士ができること、できないこと
当事務所では、離婚について当事者間ですでに話し合いがまとまり、合意した内容を書面に残したいという場合に、離婚協議書の作成や、公正証書にするための原案作成をお手伝いしています。
大切なのは、「行政書士が夫婦の間に入って、どちらか一方の希望を通す」のではなく、当事者の方々が話し合って合意した内容を、後から認識の違いが生じないよう、できるだけ分かりやすく具体的な書面に整理すること。
そのような書面作成を通じて、離婚後のトラブルを少しでも減らすことが、行政書士としてできる支援の一つだと考えています。
【ご相談いただく際のご注意(業務範囲について)】
- 「相手と交渉してほしい」
- 「慰謝料を請求したいので相手と話し合ってほしい」
- 「相手が提示した条件が妥当か判断して交渉してほしい」
このように、当事者間の紛争について代理・交渉することは、行政書士の業務範囲ではありません。すでに当事者間で争いが生じている場合や、相手との交渉・代理が必要な場合には、当事務所より弁護士へのご相談をご案内いたします。
まとめ
離婚協議書や公正証書は、単なる手続き用の書類ではありません。離婚した後の生活を、お互いにどうしていくのかを整理し、将来のトラブルを減らすための「ルールブック」のようなものです。
当事者間で話し合いがまとまっているのであれば、そこで決めたルールを口約束のままにせず、一度きちんと書面に整理してみてはいかがでしょうか。
当事務所では、離婚協議書の作成や、公正証書作成に向けた原案作成についてご相談を承っています。「何を決めておけばいいのか分からない」という段階でも、まずは現在の状況を整理するところからご相談いただけます。
離婚後の生活まで見据えて、今できる準備を一緒に考えていきましょう。


